EUにて商標権の権利保護を行う際に役立つ情報を、以下に掲載しております。
本ページが、お客様が海外で知財保護を行う上での一助となれば幸いです。ぜひお役立て下さい。

平均的な審査期間

※2023年8月時点
出願~登録:およそ5.15ヶ月
(異議申立がされなかった場合:以下[2. (5) (c) 異議申立期間]をご参照ください)

EUにおける商標権

(1)権利の及ぶ国

現在27カ国の欧州連合加盟国(EU加盟国)を「一地域」として扱い、1つの出願でこの全域(各国)に商標権が及びます。それが、「欧州連合商標」(EUTM)です。かつては、欧州共同体商標(CTM)と呼ばれていました(2016年3月に改称)。

2023年時点でのEU加盟国は、「ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、ドイツ、エストニア、アイルランド、ギリシャ、スペイン、フランス、クロアチア、イタリア、キプロス、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、ハンガリー、マルタ、オランダ、オーストリア、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スロバキア、フィンランド、スウェーデン」(27カ国)です。

※イギリスは2021年1月にEUを離脱しており、非加盟国です。イギリスでの権利取得には個別に直接出願することが必要です。
※加盟国が拡大される際には、追加の手続や手数料なしで、自動的に新加盟国にも権利が及びます。
※27カ国を「一地域」と扱うため、加盟国のうち特定の一部地域のみに権利範囲を限定することはできません。

(2)欧州連合商標(EUTM)以外の手続きについて

EUTM以外にもEUにて商標権を取得する方法があり、具体的には、マドプロ出願と各国への直接出願があげられます。

(3)出願時に必要な情報など

EUTMの出願は、欧州連合知的財産庁(EUIPO)に対して行われ、出願する商標、指定商品、出願人情報やその他を記載した願書を提出します。

代理人の選定は任意ですが、欧州連合等に居所を持たない出願人は欧州経済領域(EEA)内の弁理士や特許事務所等を代理人とする必要があります。

願書において、EUIPOが実施する先行商標(EUTM)調査のサーチレポートを希望するかどうかが選択できます。また、商標調査制度を採用している加盟国のサーチレポートを選択することもできます。

(4)出願言語について

EU各国の言語で出願することができます。また、第二言語として、EUIPOの公用語である5つの言語(英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語)のうち一つを選択することになります。

(5)出願~登録手続の流れ

EUTMの出願から登録までの手続は、主に以下3つの審査段階があります。

(a) 方式審査、絶対的拒絶理由の審査

・出願書類に不備がないか、指定商品/役務の区分がふさわしいか(権利化を希望する指定商品/役務について、明確かつ正確に記載することが望ましい。)

・絶対的拒絶理由(出願された商標自体に、登録できない理由がないかの審査。識別力の有無など。)

EUTM出願では、相対的拒絶理由(出願された商標が、他人の先行商標と比べて同一又は類似であるか否かの審査)については審査されない点が特徴です。第三者から異議申立があった場合にのみ相対的拒絶理由が審査されます。

(b) 公告

上記(a) の審査終了が公告されます。

(c) 異議申立期間

上記(b) で公告された商標と同一又は類似の先行商標を持つ第三者は、公告日から3ヶ月以内に異議申し立てを行うことができます。異議申立の結果が出願人に肯定的だった場合、あるいは異議申立がされなかった場合、EUTMは登録となります。

異議申立により、EUTMの登録が拒絶された場合、加盟国各国における国内商標の出願に変更することができます。この場合、EUTMの出願日が各国での出願日として維持されます。

(6)登録後の管理および注意事項

登録後の留意事項として、以下(d) ~ (g) があげられます。

(d) 商標権の更新

EUTMの存続期間は、出願日から10年間です。10年毎に更新することで半永久的に権利を維持することができます。

(e) 商標の使用

EUTMの登録権者(所有者)は、EU各国において使用する義務があります。もし、5年間の使用がされていない場合には第三者による取消の申立が可能となります。取消の申立を受けた後で使用したとしても、権利維持のみのために使用開始した場合には取消される可能性が高いことに注意が必要です。

使用の要件としては、EU加盟国全域でなくても、いずれか1か国で指定商品(役務)について使用されていれば認められるとされています。

(f) 商標権の譲渡

EUTMは単一の登録でEU加盟国全域をカバーしています。そのため一部譲渡はできません。一方、商品・役務毎の分割譲渡は可能です。

(g) 類似する後願商標の排除

上記[2.(5) (a) 方式審査、絶対的拒絶理由の審査]の通り、EUIPOの審査では類似する商標が拒絶されないことから、類似する商標が登録される可能性があります。EUIPOから類似する商標に関する通知を受けることもありますが、登録後には、類似する後願商標を定期的に調査することをお勧めいたします。

(h) 異議申立

EUTMの所有者は、類似する後願商標に対して異議申立をすることができます。異議申立可能な期間は出願公告から3ヶ月以内です。

(i) 無効

EUTMの所有者は、類似する後願商標権に対して、登録を無効とすべき旨の宣言を求めることができます。この宣言ができる期間は、原則、後願商標が使用されていることを知ってから5年以内とされています。

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    この記事の監修者

    八谷 晃典 (はちや あきのり)
    大阪法務戦略部長 弁理士/特定侵害訴訟代理人 スペシャリスト

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