はじめに

昨今、街には様々な料理を提供する飲食店が数多くあります。また、それぞれの飲食店のサービスの様式も、フルサービスの店からセルフサービス、テイクアウト、デリバリーなど様々です。

いずれにしても、飲食店での食事は、現代に暮らす私たちの生活にとって、食という生きるために欠かすことのできない営みの場であるだけでなく、慶事や弔事、歓送迎会、毎日の記念日などの特別な場面を演出する場であり、また、家族や友人、職場の仲間たちと語り合い、仲を深めていく絶好の場でもあります。それは、単なる栄養の摂取以上の楽しみや喜びを、私たちに与えてくれます。

飲食業界の隆盛は、景気の動向に大きく左右されると言えます。景気が落ち込んでいる間は、外食を控え、家庭での食事を中心とすることで、家計の支出を抑える傾向がありますが、一方、景気が良くなると、多くの人が様々な機会に飲食店を利用します。

近年、アベノミクスなどの経済政策によって景気は回復傾向にあり、飲食業界にとっては厳しい状況から発展の時期に差し掛かっています。この機会に、事業のさらなる発展を考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

 ”HARAKENZO more は、飛躍を目指して試行錯誤を続ける飲食業界の皆様を応援し、知的財産の分野について、皆様の事業をお手伝いしていきたいと考えています。このページでは特に、商標の分野について、皆様の役に立つ情報を紹介しています。

「飲食物の提供」について

飲食店において食事を提供するサービスについて使用する商標は、第43類「飲食物の提供」を指定役務として登録する必要があります。

この「飲食物の提供」は、提供する飲食物の種類が何であるかを問いません。つまり、日本料理店も、中華料理店も、欧米やその他のエスニック料理店も、すべて第43類「飲食物の提供」にあたります。

 また、この「飲食物の提供」は、提供するサービス形態も問いません。ファミリーレストランや一般的な居酒屋のように、席で注文を取り、席まで料理が運ばれてくる場合も、ハンバーガーショップや一部のカフェのように、カウンターで注文し、購入した飲食品を利用者が自ら席まで運ぶ場合、さらにはピザや寿司などに多い、自宅まで配達される場合も、この「飲食物の提供」となります。

 商標を使用する飲食店のサービスについて、その飲食店で提供されている飲食物の種類やサービスの形態をはっきりさせておきたい場合には、「○○料理を主とする飲食物の提供」や「○○(レストラン、喫茶店、食堂など)における飲食物の提供」というように指定役務に明記します。現在データベース上では、「飲食物の提供」として、500件を越える種類の指定役務が確認できます。

 飲食店における「飲食物の提供」というサービスは、その内容にかかわらず同じ区分の指定役務となっていますが、当HP「食品業界の皆様へ」のページでも紹介しているとおり、食品を商品として販売する場合には、その食品がどういうものであるかによって、指定商品の区分が変わります。

飲食業界の皆様にとって、どういう場合にこのことが問題になるかと言いますと、飲食店のレジ前などで、貴店オリジナルの製品を販売する場合です。このオリジナル製品に、貴飲食店の商標を使用する場合には、第43類「飲食物の提供」の他に、その製品の特徴に合わせた指定商品での登録が必要になります。

たとえば、貴店で提供しているカレーやスープなどをレトルトパウチした製品を作った場合、「レトルトパウチされたカレー」、「レトルトパウチされたスープ」などは、第29類になります。他にも、ドレッシングなら第30類、ふりかけやお漬物なら第29類となります。

このように、食品を商品として販売する場合には、「飲食物の提供」とは別の区分・指定商品での商標登録が必要となりますので、注意が必要です。

フランチャイズについて

 飲食業界にとって、フランチャイズ型の事業展開はなじみ深いものでしょう。フランチャイズは、商号や商標の使用とともに一定地域内での独占的販売権を与える/得るものですから、フランチャイズ型事業にとって、商標は非常に重要なものと言えます。

 フランチャイズ事業の運営や管理、フランチャイズ事業に関する情報の提供などは、第35類に分類されます。しかし、これらの指定役務は、フランチャイズ事業に対するコンサルタント業務を行う場合のものであり、フランチャイズ事業を展開していること自体では必要とされません。

 フランチャイズ加盟店である飲食店において行われているサービスというのは、結局のところ「飲食物の提供」ですから、親事業者の商標をフランチャイズ加盟店である飲食店で使用する際には、上記『「飲食物の提供」について』で説明した第43類での商標登録が必要となります。つまり、フランチャイズ展開しているかどうかは、商標の指定役務を決めるにあたっては、大きな問題とはなりません。

 フランチャイズ事業にとって、商標に関して重要となるのは、基本的なことですが、「商標登録されているか」ということです。日本において商標権は、商標が登録されることによって発生します。ですから、登録されていない商標については、その権利を主張することは大変困難です。

 フランチャイズ型事業は、商標の使用によって、親事業者と同じクオリティのサービスを提供するということを消費者に示すものですから、その商標権が確かなものであることは、必要不可欠だと言えるでしょう。この「商標権が確かなものである」ということは、商標登録を出願し無事登録された、ということだけではありません。商標の登録期間は10年(登録料を分納している場合は5年)ですから、登録後きちんと更新管理がなされているか、ということも非常に重要です。

海外での商標登録

 2013年に日本食が世界無形遺産として登録され、世界中で日本食ブームが起こっています。また、最近では、天ぷらや寿司といった典型的な日本食ばかりでなく、ラーメンやお弁当など、日本で発展してきた様々な料理・食生活が世界で紹介され人気となっています。日本での人気店が、海外に進出する例も多くあります。

また、日本食だけでなく、おしぼりの提供や店員の対応など、飲食店における「日本流」の細やかなサービスも、多くの国の人から好意的に捉えられているようです。日本の飲食店にとって、海外進出というのは大きなビジネスチャンスであると言えるでしょう。

 商標を海外で使用する場合、使用するそれぞれの国で登録をする必要があります。商標法は各国で定められていますから、それぞれの国の制度にそって手続きをし、登録までのプロセスを踏んでいかなければなりません。

 たとえば、日本であれば、出願時に必要な情報は、①商標 ②出願人の名称・住所 ③指定商品・区分 の3点が基本ですが、国によっては、出願の根拠(当該国で使用の予定がある、本国で使用している、等)を求められます。また、日本では1つの出願で複数の区分を指定することが可能ですが、1出願1区分制の国もあります。そのような国で複数の区分で登録したい場合は、区分ごとに分けて出願しなければなりません。

 一方、マドリッド協定議定書(通称マドプロ)に参加している国であれば、日本での商標登録を元に、1つの出願で複数の国に出願し、それぞれの国で登録を受けることができます。

マドプロ制度による商標登録の場合、登録を希望する国を指定し、日本の特許庁を通じてマドプロ国際事務局に出願をします。その後、国際事務局から指定された国へ出願が通報され、そこからは各国の制度にそって登録のための審査がなされます。

このようなプロセスをたどるので、マドプロ制度を利用した場合には、出願にあたってのコストを抑えることができます。また、更新にあたっても、国際事務局に対する手続きのみで複数の国の登録を更新することができるので、管理の面からもメリットがあります。

 マドプロ制度を利用するにあたっての主な注意点としては、①マドプロ参加国でなければ指定できない、②本国登録の無効・取消や登録拒絶によって指定国での保護が取り消される場合がある、③登録までに直接出願より時間がかかる場合がある等があげられます。

国によって、商標制度は千差万別であり、商標の特徴や使用状況、ビジネスプランを十分に検討する必要があります。海外での商標をお考えの場合は、”HARAKENZO more のような国際特許・商標事務所にご相談ください。知的財産のプロフェッショナルとして、各国の制度のもと、お客様のビジネスにとって最適な内容での登録をお手伝いいたします。

”HARAKENZO more は飲食業界の皆様を応援します

 苦境の中でも常にチャンスを探し、新たな楽しみや団欒を私たちに与えてくれる飲食業界は、今後も国内、国外問わず発展を続けていくことでしょう。

”HARAKENZO more としても飲食業界の皆様の知的財産保護にお役立ちしたいと考えておりますので、まずは、お気軽にご相談頂ければ幸いです。

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この記事の監修者

八谷 晃典 (はちや あきのり)
大阪法務戦略部長 弁理士/特定侵害訴訟代理人 スペシャリスト

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