1.早期審査とは

2021年2月現在、商標出願から最初の審査結果の通知までは約12~14ヶ月掛かるとされています。出願数の増加により、最初の審査結果を受領するまでに長期を要しております。
しかしながら、早期審査の申請をすることで、申請日から約2ヶ月で最初の審査結果通知を受けることができます。

(※新しいタイプの商標、立体商標の一部について申請することはできません。)

2.対象となる出願

以下の3類型がありますが、いずれも、①出願商標を既に使用していること、或いは、②使用の準備を相当程度進めていることが前提となります。

引用文献:「特許庁 商標早期審査・早期審理ガイドライン(令和2年4月改訂)」

<コメント>

オススメは、対象3となります。
仮に証拠書類等が早期審査の要件を満たさなくても、「類似商品・役務審査基準」等に掲載の商品・役務のみを指定している場合にはファストトラック審査の対象となるため、出願から約6ヵ月程度で最初の審査結果が通知されます。

3.必要書類・必要情報

(1)必要情報

①商標の使用者、②使用商品・役務、③使用時期、④使用場所、⑤使用証拠書類名、⑥緊急性の説明(対象1の場合のみ

※使用準備の場合には、①商標の使用予定者、②使用準備商品・役務、③使用開始予定時期、④使用予定場所、⑤使用準備証拠書類名

(2)使用証拠書類

商標が実際に使用されていることが分かる資料、使用の準備を相当程度進めていることが分かる資料をご準備ください。

≪使用証拠の例≫
・商標が使用されているホームページ
・商標が使用されているカタログ、製品案内
・商標が使用されている商品の写真
※商標が使用されていることが分かればこれ以外の証拠書類でも問題ありません。

≪使用の準備を相当程度進めている場合の必要書類≫
以下の4点が客観的に分かる資料が必要です。
・使用予定の商標
・使用予定の商品・役務
・使用の準備が相当程度進んでいること*
・使用予定者が出願人又はライセンシーであること

*基本的に、使用証拠の資料と同じですが、使用準備が相当程度進んでいることが客観的に示すためには、出願人が作成したカタログや、ホームページの写しのみではなく、カタログ印刷の受発注を示す資料、商品の製造に関する受発注資料、役務の提供の用に供するものの受発注を示す資料、新聞記事等の報道資料といった、対外的な動きを示す証拠が必要となる点に注意が必要です。

収集頂く上記の資料には、以下の条件が満たされているかもご留意ください。

①使用商標について

出願商標と同一商標を使用していることが分かる資料であること。

引用文献:「特許庁 商標早期審査に関するQ&A」

<コメント>
商標の同一性については、判断が厳しい傾向が見受けられます。
特に図形については、相似形でないと同一性を満たすのは難しいと考えたほうが良いでしょう。

②使用商品・役務について

対象1、3は一部の指定商品・役務についての証拠、対象2は全ての指定商品・役務についての資料であること。

③商標の使用者について

商標の使用者を特定できる情報が掲載されていること。

  使用を示す証拠 使用者を示す証拠
例1 商標を付した商品の写真、カタログ、パンフレット 販売者情報の写真/ページ写し
例2 商標を付した商品が掲載された広告、ウェブサイトの写し ウェブサイト運営者のページの写し

※使用者がライセンシー(使用許諾を受けた者)である場合は、ライセンシーであることを示す書類と、出願人との関係を示す資料が必要です

例:組織図や支配関係を示すHPの写し(ライセンシーが子会社の場合)

  ライセンス契約書や使用許諾書等の契約書(ライセンシーが他社の場合)

(3)緊急性に関する証拠書類 ※①の場合のみ

例:①第三者による具体的な使用状況が分かる書類(上記の使用証拠書類に準じる)

  ②警告の根拠法、警告を発した者の住所・氏名が記載された警告書などの写し

  ③第三者から出願人に宛てた使用許諾依頼書などの写し

  ④外国への出願書類の写し(商標、指定商品/役務、出願人が客観的に分かる書類)

  ⑤国際出願の意思に関する宣誓書

4.早期審査の請求後

提出した書類をもとに、早期審査の対象となるか審査されます。

早期審査の対象と...

認められた場合

 出願から約2ヶ月程度で、最初の審査結果(登録査定又は拒絶通知)が通知されます。

認められなかった場合

 「早期審査選定結果通知書」が通知され、早期審査の対象としない理由が通知されます。

※対象3について、「類似商品・役務審査基準」等に掲載の商品・役務のみを指定している場合にはファストトラック審査の対象となるため、出願から約6ヵ月程度で最初の審査結果が通知されます。

※早期審査は何回でもできるため、再度早期審査の申請をすることも可能です。

<コメント>

早期審査をご希望の場合には、「ご相談フォーム」からお問合せください。

この記事の監修者

八谷 晃典 (はちや あきのり)
大阪法務戦略部長 弁理士/特定侵害訴訟代理人 スペシャリスト

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