メキシコ合衆国(以下、「メキシコ」という。)にて商標権の権利保護を行う際に役立つ情報を、以下に掲載しております。

このページが、お客様が海外で知財保護を行う上での一助となれば幸いです。ぜひお役立て下さい。

<平均的な審査期間>
現状では、出願から登録に至るまでの審査期間は、拒絶理由通知がなければ約6ヶ月~1年程度です。

メキシコにおける商標権

商標制度について

(1)商標の定義

メキシコでは、「商標とは、感覚によって知覚でき、明瞭で正確な保護対象を設定でき、市場における同種または同範疇の他の商品/サービスから識別できる標識」と定義されています(産業財産法第171条)。

以前は、「視覚可能なもの」に限定されていましたが、「感覚によって知覚できるもの」に法改正されました。
そのため、音や匂いなどの視覚で認識できない商標も、保護を受けられるようになりました。

(2)保護されうる商標の種類

  • 名称及び図形(十分に顕著性を有し、自他識別力を有するもの)
  • 立体的形状
  • 商標及び会社名称又は企業名称
  • 個人の固有名称
  • 音、匂い、ホログラム等の非伝統的商標
  • 識別力のあるトレードドレス

その他に、登録可能なものとして以下のものが存在する。

  • 1. 広告スローガン
  • 2. 団体商標
  • 3. 連合商標
  • 4. 周知商標・著名商標

(3)登録できない商標

以下のものは、商標として登録できません。

  • 先行商標と類似しているもの
  • 識別力がない・低いもの
    普通名称、慣用名称
    単独の文字・数字・色 など
  • その他
    不正に出願された標識
    国・地方自治体・国際機関等の紋章
    芸術的・文学的作品の名称や作品を模倣したもの など

出願から登録まで

(1)存続期間

  • 登録日から10年。
    ※2020年11月4日以前に 出願された件は、出願日から10年となります。
  • 10年ごとに更新が可能
    →存続期間満了日の6ヶ月前~6ヶ月後まで更新手続が可能です。日本の商標制度とは違い、満了日を経過後に手続をしても追加の庁費用は発生しません。
    →更新を行うためには、メキシコ国内でその商標を使用していなければなりません(後述の「(8)使用宣誓」参照)。

(2)出願制度

  • 1商標1区分制度
    →複数の区分を指定した出願が認められていないので、1区分ずつ商標を出願する必要があります。

(3)出願~審査まで

ア)商標出願について
  1. 願書に必要な情報
    ・出願人の氏名/名称、国籍、住所 
    ・商標名およびカラーの商標見本、又は立体商標の場合はその旨
    ・商品/役務の記載(ニース国際分類に従う)
    ・メキシコにおける最初の商標使用日(後に訂正不可)、または、未使用である旨記載
    ・ 委任状
    ・基礎出願の情報(優先権を主張する場合)

    ※出願書類には、スペイン語を使用すること又はスペイン語の翻訳文を提出することが義務付けられています。
  2. 早期審査制度
    日本のような早期審査制度はありません。
  3. 情報提供制度
    出願に関して、第三者による情報提供を受け付ける制度はありません。
    ただし、異議申立期間が、実質的に審査より先に設定されています。
イ)出願公告・異議申立

これまで、メキシコでは異議申立制度がない世界的に珍しい国の一つでしたが、改正法により、2016年8月30日から異議申立制度が新たに導入されました。
出願の受理後、10営業日以内に、公報にて公告されます。

異議申立期間は、出願公告の翌日から1ヶ月以内です。誰でも異議を申し立てることができます。

ウ)審査
  • 審査は出願受付順に実施されます。
  • 最初に方式審査が行われます。
    方式審査において、指定商品/役務の分類について審査が行われ、その結果分類や表記が適切でないと判断された場合には、補正指令が出されます。
  • 方式審査の後に、実体審査(絶対的拒絶理由および相対的拒絶理由)が行われます。
  • 拒絶理由通知
    応答期間:2ヶ月以内
    電子データ形式で通知されます。
    必要に応じて意見書・補正書・証拠・同意書等を提出し、反論や補正等の対応を行います。
    先行商標による拒絶理由の解消のために、共存同意書の提出が可能です。

(6)商標登録

異議申立がなく異議申立期間経過し実体審査で承認されるか、異議申立を受けた出願が承認されると、メキシコ産業財産庁(IMPI)は商標を登録し、登録証を出願人に送付します。
商標出願に対する拒絶理由通知等がなくストレートに登録された場合、出願日から約6ヶ月~1年程度で登録証が発行・交付されます。

(7)拒絶査定不服審判

拒絶査定に不服の場合、出願人は、IMPIまたは裁判所のどちらかに拒絶査定不服審判請求を行うことができます。

(8)使用宣誓

法改正により、以下の期間中に使用宣誓を行うことが必須となりました。ただし、使用証拠は不要です。
使用宣誓しない場合、登録は自動的に失効します。
使用していない指定商品・役務は、保護から除外されます。

【使用宣誓書 提出必須時期】

 国内登録
 ・登録日から3年経過後、3ヶ月以内
 ・更新時

 国際登録(マドプロ経由の登録)
 ・メキシコでの登録日から3年経過後、3ヶ月以内
 ・IMPIへ国際登録の更新が通知された日から3ヶ月以内
※ただし、メキシコでの登録が認められた日が、国際登録の更新日からさかのぼって3年に満たない場合には、その更新の際の使用宣誓書の提出は不要。

【使用宣誓書 任意時期】
 ・自発的にいつでも使用宣誓書を提出することができます。
 ・提出された使用宣誓書は公開されるので、第三者への牽制となり、無用な不使用取消審判を請求されない点でメリットがあります。
 効果的に不使用取消審判を避けるために、不使用とみなされる3年ごとに使用宣誓書を提出することが推奨されています。

(9)不使用取消審判

商標が指定商品/役務に関して継続して3年以上使用されなかった場合、第三者はその商標の不使用を理由に、取消審判を請求することができます。
この3年は、第三者が不使用取消審判を請求した日からさかのぼって3年間のことです。被請求人はこの間の使用について宣誓供述しなくてはなりません。

(10)無効訴訟

商標登録に、産業財産法第258条に定められた無効理由がある場合(冒認出願等)、その商標権の無効請求を提起する事ができます。なお、無効理由によって、請求することができる期間が異なります。
一方、IMPIが自発的に冒認出願を発見し、登録を拒絶することも行われているようです。

(11)職権による商標権取消

メキシコ商標法では、行政目的のために、職権で商標登録の取り消しを行うことが可能である旨が規定されています。
しかし、実務上は職権による取り消し決定が行われることは極めてまれです。

(12)商標権の放棄

商標権者は、IMPIに商標権放棄の申請書を提出することで、自発的に登録を抹消することができます。

(13)商標のライセンス

ライセンス契約(通常使用権等)を結んだ場合、IMPIへのライセンス登録が必須です。
メキシコでは、IMPIにライセンス契約の事実を登録していなければ、使用権者による使用が有効であると認められません。

条約

 主な条約への加盟状況は以下の通りです。

パリ条約WTO協定商標法条約マドプロニース協定
加盟加盟未加盟加盟加盟

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    この記事の監修者

    八谷 晃典 (はちや あきのり)
    大阪法務戦略部長 弁理士/特定侵害訴訟代理人 スペシャリスト

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