冒認出願の問題

2019年、中国で出願された商標は約783.7万件、1日あたりの出願件数は約2.1万件、登録された商標は約640.6万件と、出願数は米国、日本を抑え世界トップです。これは、世界中の企業が飛躍的に広がる中国市場に進出するため、まず商標権を確保するという背景があるためと考えられます。
中国の企業にとっても国内で商標権を確保することは、模倣品を排除し、自らのシェアを広げるためにも重要性を増してきています。そのような中で、中国において登録されていない日本企業の商標を、それと無関係の第三者が先に出願・登録するいわゆる冒認出願が大きな問題となっています。
特に、中国において、外国の地名は有名な地名(well known to the public)でない限り不登録事由(商標法第10条)となっておらず、日本の地名・地域ブランドが第三者によって出願がなされ、登録されているのが大きな問題となっています。
 中国における日本の産業紹介イベントなどで使用した地域ブランド名が中国の個人によって出願・登録されたため、実際に地域ブランドを使用する日本の団体がブランド名を使用した商品を中国で販売することができないなど、大きな不利益を被っています。佐賀県有田町と県陶磁器工業協同組合が中国商標局に登録商標「有田焼(図形)」の取消しを求め、中国での商標登録が抹消されたというのがニュースにもなっていました。

 冒認出願であっても、文字構成が異なる場合は外観が類似していても登録されているのが現状です。この場合は、利害関係人または権利者による異議申立てにより登録を取り消すことが必要です。なお、異議が認められるか否かは、商標全体で類似かどうか、悪意があったか否かが重要なポイントとなります。そして、安全性の問題から、生命に関わる商品・役務に係る商標については、異議申立による主張が受け入れられやすい傾向にあるようです。

対応策としては、権利化が必要な商標の類似の範囲でも出願する、ウォッチングを利用する、中国での使用証拠を確保する等が挙げられます。

この記事の監修者

八谷 晃典 (はちや あきのり)
大阪法務戦略部長 弁理士/特定侵害訴訟代理人 スペシャリスト

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