これは知的財産権侵害になるの?
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1.有名商品やサービス提供画面のキャラクターを真似たパロディグッズを販売した場合
多くの創作は先人の創作に基づいていると考えられ、パロディも文化の発展と無関係とは言い切れないため一定の保護は必要となりますが、やはり知的財産権侵害の可能性はあります。
(1)意匠登録(画面については画像意匠)を受けていれば、類似意匠を業として譲渡していることになり意匠権侵害となる可能性が高いです。ただし、意匠が類似と認められない場合には侵害とはなりません。ここで、意匠が類似しているかどうかの判断は、取引にかかわる者がある商品のデザインを見たときに、その外観が似ていると感じるか否かという視点から行われます(意匠法24条2項)。
(2)著作物(画面については図形の著作物)に該当し、単に真似ただけであって独自の創作部分が全く認められない場合は複製権(著作権法21条)の侵害となり、かつ、販売行為は譲渡権(同26条の2)の侵害となります。
これに対し、独自の創作部分が認められるが元の著作物の特徴が残っている場合には翻案権(同27条)侵害の可能性があり、かつ、販売行為は譲渡権(同28条、26条の2)の侵害となり得ます。
さらに、この場合同一性保持権侵害(同20条1項)および侵害とみなす行為(同113条1項2号)に該当する可能性が高いと考えられます。
2.海賊版と気付かずに業務に使う製品を購入して使った場合
海賊版とは、著作権者の承諾を得ないで複製された製品のことをいいます。
著作物の購入およびその製品の通常の使用法に基づく使用は著作権法上侵害とはなりません。ただし、プログラムの著作物については、特別な取り扱いがあるので注意が必要です。すなわち、侵害品を購入した時点でそれが海賊版であることを知っていたときは、そのプログラムの著作物を使用する行為は著作権侵害とみなされてしまいます(著作権法113条2項)。よって、購入時に知らなかった場合は、後で知ったとしても自ら使い続ける限りは侵害とはなりません。
3.市販のゲームシステムを真似て、あるいはタイトルを似せて作ったアプリを広告付きで無償提供した場合
ゲームシステムはプログラムの著作物となる可能性が高いので以下の点に注意が必要です。
①「システムを真似る」:
元のゲームシステムと同じ内容であれば複製権(著作権法21条)の侵害となり、内容は異なるが元のゲームシステムをちょっと変えただけのような場合は翻案権(同27条)侵害となります。また、著作者の意に反する改変が認められれば同一性保持権(同20条1項)侵害となります。
②「タイトルを似せる」:
通常、タイトルは著作物としての保護を受けませんが、著作権法20条1項において「題号」の意に反する改変も禁止されているため、同一性保持権侵害となります。
③「広告付きで無償提供」:
アプリの提供ということなのでインターネット上で不特定多数の人がアクセス可能な状況になっていると考えられます。この場合、公衆送信権(著作権法23条1項)侵害となります。
4.「阪神優勝」という登録商標が存在するときに、「阪神優勝」というロゴをいれたTシャツを製造・販売した場合
商標権というものは、一度取得すればあらゆる商品・サービスについてその使用を独占できるというものではありません。
例えば、「阪神優勝」という文字商標がTシャツを指定商品として商標登録されている場合、表題のように阪神優勝というロゴを入れたTシャツを製造・販売する行為は商標権侵害となります。
これに対して、Tシャツとは全く関係のない(類似しない)コップやお皿等に阪神優勝というロゴを入れて製造・販売したり、そのコップやお皿を喫茶店で使用する行為は商標権侵害とはなりません。つまり、商標権の登録を受ける際には、商標の使用をする商品や役務(サービス)をあらかじめ指定しておかなければならず、指定された商品・役務と無関係に登録商標を使用することは商標権侵害とはなりません。
ただし、その商標が特定の人(団体)の商品や営業等の表示として有名である場合、不正競争防止法に違反するという可能性がありますので、注意が必要です。
5.著名商標が登場する漫画を企業と無関係の人が作成・販売した場合
(1)上にも書きましたが、登録商標に係る指定商品・役務が漫画の作成・販売と無関係であれば、商標権侵害とはなりません。ただし、その商標が特定の人(団体)の商品や営業等の表示として有名である場合、不正競争防止法に違反するという可能性がありますので、注意が必要です。
(2)著名商標が著作物に該当すれば、複製権(著作権法21条)および譲渡権(同26条の2)侵害の可能性が高いと考えられます。また、インターネット上でダウンロード可能な状態にした場合、公衆送信権(同23条1項)侵害の可能性も高いと考えられます。