はじめに

IT(情報技術)から端を発したデジタル革命により、世界のデータ量は 2年ごとに倍増し、また、ハードウェアの性能は指数関数的に進化しました。 このテクノロジーの進化により、人工知能 (AI)、モノのインターネット (IoT)、ブロックチェーン技術が実現されつつあります。このような技術は、我々の生活を一変させるという第4次産業革命の一部であり、これまで実現不可能と思われていた社会の実現が可能になっています。 ここで、商品・役務名については、毎年、世界知的所有権機関(WIPO)で開催されるニース国際分類専門家委員会で検討されていますが、この分野の発展のスピードが早すぎるため、適切な商品・役務名が追いついていないというのが現状となっております。 商品・役務の記載として、その商品・役務の類似群コードの包括表記(例 第9類「電子応用機械器具及びその部品」,「電気通信機械器具」等)の記載だけで十分であるとする考えもありますが、当所としては、革新的な商品またはサービスについては、積極表示することが、不測のトラブルを避ける意味でも肝要であると考えます。 そこで、人工知能 (AI)、モノのインターネット (IoT)、ブロックチェーン技術により、新しい社会の創造を目指す企業の皆様が、苦心の末に開発した革新的な商品やサービス名について商標出願をする際に、このページにより適切な商品・役務名の採択の指針となれば幸いです。

AI(人工知能)について

AI(人工知能)とは、コンピューターで、記憶・推論・判断・学習など、人間の知的機能を代行できるようにモデル化されたソフトウエア・システムをいいます(「デジタル大辞泉」より引用)。 従って、AIはコンピュータープログラムであることから、以下の商品・役務を記載する必要があります。 なお、特許庁においても下線部の商品・役務名は審査において10回以上採用されているとして、審査採用されています。
  • 第9類  「電子計算機用プログラム」 「人工知能の機能を有する電子計算機用プログラム
  • 第42類  「電子計算機用プログラムの提供」 「人工知能の機能を有する電子計算機用プログラムの提供
次に、人工知能を活用した様々なサービスも提供されています。例えば、インターネット検索エンジンではすでにAIによる利用が図られており、以下の役務が審査採用されております。
  • 第35類  「人工知能プログラムを用いたインターネット資料検索の代行並びに検索結果に関する情報の提供」
これ以外にも、審査採用されている人工知能関連の役務については、以下のものがあります。
  • 第38類  「人工知能プログラムを用いたテレテキスト及び対話型放送」
  • 第42類  「人工知能に関する研究」
その他に、自動車産業を変えると言われる自動運転技術。この技術についても、認知プロセスとして、人工知能技術が採用されています。 特許庁に採用されている「自動運転」に関する指定商品・役務としては以下のようなものがあります。 第9類:「自動運転車用コンピュータプログラム」 第12類:「自動運転車」 第42類:「自動運転技術・自動運転車・自動運転車用のコンピュータソフトウェアに関する試験・研究・設計・開発及び これらに関する指導・助言・情報の提供・コンサルティング」、「インターネットを介した⾃動運転車の運行管理用コンピュータプログラムの提供」
  • 第9類  「自動運転車用コンピュータプログラム」
  • 第12類  「自動運転車」
  • 第42類  「自動運転技術・自動運転車・自動運転車用のコンピュータソフトウェアに関する試験・研究・設計・開発及び これらに関する指導・助言・情報の提供・コンサルティング」 「インターネットを介した⾃動運転車の運行管理用コンピュータプログラムの提供」

IoT(モノのインターネット)について

IoTに関連する商品について、商品名を積極的に表示するには、その商品の機能・特性を記載したうえで、最後に商品を特定する必要があります。 例えば、特許庁において審査採用された商品としては以下のものが該当します。
  • 第9類  「音声で制御されるスピーカー」 「コンピュータ・タブレット型コンピュータ・携帯情報端末等との無線データ通信機能を有する釣銭支払機」 「各種センサからの信号を受けて監視者へ自動通報する警報装置」 「身体に装着可能なデータ通信用機械器具」 「照明用器具の遠隔制御のためのコンピュータソフトウェア」
また、審査採用例以外にも、下記のように形状で特定したうえで記載することも可能と考えます。 「愛玩動物用トイレの形状をした電気通信機械器具」 「愛玩動物の尿や体重を検知・測定・分析するためのトイレ型の測定機械器具」 この他に、モノをインターネットとつなぐために、スマートフォンなどの端末を利用する場合には、以下のような指定商品も含める必要があるでしょう。
  • 第9類  「音声によって操作可能なコンピュータアプリケーションソフトウェア」 「カーテンを自動で開閉させるためのスマートフォン用・携帯電話用・携帯情報端末機器用又はコンピュータ用のアプリケーションソフトウェア」
IoT関連の商品を記載する場合には、まずは、包括表記を記載し、さらに積極表示として、形状や用途・機能で商品を特定することが肝要です。

ブロックチェーンについて

上記のIoTと相性の良い技術として、「ブロックチェーン」があります。ブロックチェーンというと、ビットコインをはじめとする仮想通貨のイメージが強いですが、中央集権的なシステムから脱却し、分散型かつ改ざん等の危険性の低いシステムを可能にする技術であるため、多数のモノをインターネットでつなぐIoTの分野においても活用が見込まれます。 残念ながら、現状においてブロックチェーンの語を含んだ指定商品・役務の特許庁の採用例はほとんどありません。 しかし、ブロックチェーン技術は最近、耳にする機会も多くなりました。 よって、下記の記載例のように、ブロックチェーン技術を使用した商品・役務として記載することにより、採用されやすくなると考えます。
  • 第9類  「ブロックチェーン技術を利用したアプリケーションソフトウエア」 「ブロックチェーンを使用する電子通貨交換用のコンピュータソフトウエア」
  • 第42類  「ブロックチェーン技術を利用したインターネットプラットフォームの開発」

”HARAKENZO more” は第4次産業革命関連の業界の皆様を応援します

上記で述べたことは、ほんの一例です。 近年、常に成長し続けている第4次産業革命関連の業界では、他者の商品またはサービスと差別化を図るうえで、商標の重要性がますます高まっていくと考えます。 ここで、そのように苦労して作った最先端の商品・サービスについておおざっぱな商品・役務名で良いのでしょうか。 同一の類似群コードが付された商品は互いの商品が類似すると推定されるにとどまり、反証があれば、商品は非類似ともなり得ます。よって、不測のトラブルを回避するために、最先端の商品・サービスであるからこそ、積極表示をすることが得策と考えます。 ”HARAKENZO more” は、商標の専門家集団として、商品・役務名の積極表示は得意とするところでありますので、まずは、お気軽にご相談頂ければ幸いです。 ※本ページに記載した指定商品・指定役務は参考であり、特許庁からの拒絶理由が通知されないことを保証するものではありません。

この記事の監修者

八谷 晃典 (はちや あきのり)
大阪法務戦略部長 弁理士/特定侵害訴訟代理人 スペシャリスト

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